エピローグ
終焉
我々アカルダン(アトランティス科学協会)のメンバーは、
最後の別れの儀式を行った。
それは寺院でもなく、山上でもなく、地下の秘密ロッジでもなく、
まさに全土を覆い尽くしていく、大洪水、大津波を見下ろす、
マザーシップ、惑星間移動船の司令デッキの上で。
青ざめた顔色のアルデマール、
この人類救済計画の総司令官アントゥーリオ。
アントゥーリオは後にイエス・キリストとして世に知られることになる。
そして、この大惨事を引き起こした張本人である、
ヤブァルティオス。この大悪人は後にヤーヴェとして聖書に登場する。
ヤーヴェこそ悪の根源である。
壁前面がガラスでできているかのように、巨大なモニターになっており、
上空から地表が津波に飲み込まれていく様を見下ろしていた。
儀式は古代から伝わっている聖杯と聖なるホスチアであるパンを用いて行われる。
互いにパンを裂いて分け合い、聖杯グライアルを頭上に掲げると、
司令官アントゥーリオは最後の挨拶をした。
それは別れの挨拶でもあり、未来への預言でもあった。
「我々は終焉を迎えた。この太陽系の水の星、惑星カーン(地球)は、
第四のチェーン終えて第五のチェーンに引き継がれる。
ご存知のようにこの惑星はまだ雛鳥であったが、羽を伸ばし大きく旅立つ。
我々は惑星間のみならず、他の太陽系の人類、他の銀河系の人類とも交流してきたが、
次の人類は己の惑星に閉じこもり、偽の科学の迷妄の中で苦しむだろう。」
その時、彼はヤブァルティオスを見つめたが、この悪人は偽の敬虔さで、
頭を下げて最大の侮辱を避けた。
「次の人類はすでに誕生していて、我々のことなど想像もしないだろう。
だがしかし、直感と霊性を失う代償として、我らが発達させなかった、
理性と論理的思考を、つまり脳を最大限に発達させる。
そしてそれは、善と悪、理性と直感の対立の始まり、あらゆる存在の敵対の始まりだ。
幸にして、次の人類がこの物質的脳を克服するとき、
第六の時代が始まり人類は再び霊的な存在に戻るだろう。」
最後の言葉を言い終わらないうちに、巨大な山が我々の目の前に現れた。
それは須弥山とも言われる聖なる山、エベレスト、チョモランマであり、
地表がうねるかのように隆起と沈降を繰り返していた。
あの偉大な文明はどこに行ってしまったのか?
空間から無尽蔵のエネルギーを作り出し、
巨大な10の都市を築き上げた偉大なるラムーよ。
3世代にわたり治世した王族は、偉大な水星の神ヘルメスの名を重ねて、
ヘルメス・トート・トリスメギストスと後世に讃えられたが、
エーテル世界の空間からこの物質的世界に地球が変化するときに、
ただ警告しかできなかったのか?
最後の女王は永遠の命に心を奪われ、
遺伝子交配と内分泌腺移植、臓器移植など、
今の医療科学でさえもできないことを易々と成功させたが、
その結果はどうなったのか?
人類の倫理は荒廃して、奇々怪々な生物を生み出したが、
それを人々は人類の祖先と呼び、
アトランティスの伝説を嘲笑う。
よくよく覚えているがよい。
あの日、
アトランティスの最後の日にはあらゆることが起きた。
天地の異変、地球規模の洪水、人類の対立と大戦争による絶滅、
そして燃えるような天体が、異空間から現れて、
地球を現在のフェーズへと吹き飛ばしたのだ。
そして、この第5番目の時代の終わりは、
今まさに来ている。
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